年間3万人以上射殺される!のに、なぜアメリカは銃を禁止しない?
最近出張でアメリカに来ていますので、アメリカの銃問題について書いてみます。
2017年10月に、ラスベガスでアメリカ史上最悪の乱射事件が起こりました。
その事件の後も何回か乱射事件が起きました。
乱射事件は銃規制が厳しい日本では考えられないことです。
知り合いの中でもアメリカ留学に行きたいけど、銃社会が怖くて行けないと言っている人もいます。
では、なぜここまで被害が起きているのに、アメリカも日本のように銃を完全に禁止しないでしょうか?
今まで見てきた記事や報道でよく言われていたのは以下の三つの理由です。
・アメリカの憲法では個人が銃を持つ権利があると定められています。
憲法原文:
The Second Amendment of the United States Constitution
"A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed."
アメリカ合衆国憲法修正第2条
—規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利を侵してはならない。
(憲法では民兵と書いていますが、連邦最高裁判所は個人の権利と解釈しています。)
・アメリカの巨大な銃市場であり、何十万の雇用を生み出しています。銃産業の利益集団も政治家に圧力をかけるので、銃を簡単に禁止することがでいません。
・アメリカの国土は広い、犯罪事件が起きると、警察がすぐ駆けつけることができないため、アメリカ人は銃を所持するべき。
以上の三つの理由を見ると歴史的な理由と利益集団が銃を禁止する動きの足枷になっているように見えます。
ここまで被害が起きても銃を禁止しない理由としては十分ではないように感じます。
この疑問を解くために、もっとデータを見ないといけません。
アメリカに三億丁以上の銃があり、毎年3万人が発砲事件により死亡します。
日本の最新のデータでは2017年一年間で、発砲事件による死亡者数は3人。
(https://www.nippon.com/ja/features/h00178/)
一万倍の差です!
2017年の推計人口では、静岡県の伊豆市の人口が30,283人です...
恐ろしいですね!
3万人は多いですが、アメリカの3億人の人口で見ると毎年発砲事件でなくなる方の数はアメリカ人口の一万分の1になります。
では、この数字を多いか、少ないか?
2017年、アメリカでの自動車事故による死亡者数は4万人を超えています。
(https://www.usatoday.com/story/money/cars/2018/02/15/national-safety-council-traffic-deaths/340012002/)
また、発砲事件で死亡した3万人の内訳をみてみると、2万人以上は自殺者です。
Gun Deaths Are Mostly Suicides - The New York Times
銃で自殺した人数も、発砲事件で死亡した人数にカウントされます。
データによるとアメリカの自殺者の約半分は銃を使用しています。
https://www.bradycampaign.org/sites/default/files/AmericansInCrisis-GunsAndSuicide_09-2017.pdf
自殺者にとって、銃は単なるツールです。銃がなくても、他の方法を選びます。
ですので、銃を禁止しようがしまいが、この2万人の数字にほぼ影響がありません。
もちろん、銃があるから自殺が簡単になって、自殺者数が増えるという説もありますが、なかなか検証しにくいです。
言い方は正しいかわかりませんが、自殺者は自殺の方法を選ぶ権利があります。
銃による自殺は一番簡単で、死亡確率が高い自殺方法です。
では、自殺者数を除いても残り1万人は発砲事件で死亡しているのに、なぜアメリカは銃を禁止しないのか?
アメリカ人の意見を聞いてみると、いろんな意見が出てきます。
銃を支持する人から見れば、どの社会にも犯罪者がいる、犯罪者は法律を守らないので、銃を禁止すると、法律を守る人が銃をなくし、犯罪者は今まで通りに銃を所持し続けます。コカイン、ヘロイン、覚せい剤を禁止しても、禁止しきれないことと同じです。
また、銃を完全に禁止するより、銃所持者のバックグランドチェックをもって厳しくすべきです。人を殺すのは銃ではなく、人。バックグランドチェックをしっかりすれば、乱射事件も減るに違いないとの意見もよく聞きます。
アメリカにいるとわかりますが、多くの家のドアは結構シンプルのものが多く、防犯性が高いと思えません。
なぜなら、家主は銃を持っている可能性が高いので、泥棒や強盗は気軽に入室しませんし、家主も銃を持っているので、やり返す自信があるからかもしれません。
では、銃を禁止するとアメリカは安全になるのでしょうか?それとももっと危険になるのでしょうか?
銃を禁止すべきだと考えている人がよく例に挙げるのは、子供が間違って発砲してしまい、死亡するケースです。私もこのようなニュースを聞くたびに心が痛いです、とても残念に思います。
しかし、銃を支持する人から見れば、ミス発砲事故による死亡者数は水泳による死亡者数とさほど変わらないので、ただの事故であり、銃の保管、管理がしっかりしていれば、避けられることです。
このような論争は今まで一度も止まったことがありません。いろいろ意見を聞いたうえで、アメリカは銃を禁止していないでしょう。
では、実際アメリカ人は銃の影響で毎日恐怖の中で生きているのでしょうか?
私は最近アメリカにいますが、特にアメリカ人が銃を怖がっているように思いません。
アメリカ人にとって、銃/射撃は生活中の一般的なものであって、スキー、登山、レーシングのような危険度が高いスポーツのような存在です。また、実際は使わないが、もっていると心強いものでもあります。
まぁ、だからと言って日本も銃を開放すべきと思いませんが。
この文を書いたのは、アメリカが銃を禁止しないのはいろいろ理由があると言いたいからです。
やはり、さまざまな角度から見ないと、わからないことが沢山あります。